多額の結婚費用は贈与になりますか?
妹は結婚時に父から多額の結婚費用を出してもらっています。私は独身で結婚費用等の贈与を父の生前にもらっていません。父の遺産には不動産と預金がありますが、妹と法定相続分どおり半分ずつ分けないといけないのでしょうか?
妹さんの結婚費用等の贈与は、『特別受益』に該当する可能性があります。その場合、特別受益の額に相当する分だけ遺産を多めにもらうことができます。
被相続人から生前に多額の贈与を相続人の一人が受けとっている場合、遺産相続の際に、他の相続人はその相続人と同じ相続分では不公平を感じることは当然のことです。
そのようなケースにおいては、相続時に生前贈与を特別受益として相続財産に持ち戻すことにより調整できる場合があります。
特別受益が民法上認められるケースとして、”婚姻費用として生前贈与を受けていた場合”というのものがあります。
ここで、婚姻費用とは持参金、嫁入り道具の費用、結納金、挙式費用などを指します。
被相続人の資産状況や生活状況から、婚姻費用の金額が扶養の一部とみなされるのか、特別受益となるのか事案に応じて検討する必要があります。
持参金、嫁入り道具、結納金は特別受益に該当するが、挙式費用、披露宴の費用は生前贈与ではなく、特別受益には該当しないという考え方が一般的です。
もっとも、民法上の特別受益の規定は相続人間の不公平を調整するというのが趣旨ですから、あまりにも不公平な支出で、公平を図る必要がある場合は、家庭裁判所の調停手続の中で特別受益と認められるケースもあるようです。
特別受益を客観的に示す基準はないので、ケースごとに特別受益が認められるかどうかは異なってきます。
そのため、相続人間で不公平が生じる可能性がある場合は、生前に民事信託の活用や、遺言書を作成し、誰に何を相続させるか決める等の遺産分割対策を行うことが必要です。