法定後見制度を利用する際の注意点はありますか?
父が認知症のため、父名義の空き家を売却する事ができずに困っています。成年後見人をつければ空き家を処分することができると聞きましたが、一旦、成年後見人になってしまうと父が亡くなるまで家庭裁判所に業務報告を続けなければならないということで成年後見の申立てをためらっています。成年後見の申立てをする前にメリットとデメリットを知っておきたいです。
認知症問題や空き家問題が大きな社会問題となっていますが、事前対策を何もすることなく認知症となってしまった場合、空き家を処分するためには法定後見制度を利用する必要があります。
法定後見制度はメリットもありますがデメリットもあります。
デメリットとしては、一旦、後見人に選任されると本人が亡くなるまで後見業務を継続しなければなりません。
後見人に選任された後1ヶ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出が義務付けられ、毎年1年に1度、報告書を作成し家庭裁判所に提出しなければなりません。
弁護士や司法書士等の第三者が後見人に選任されることもありますが、その場合は、後見業務が終了するまで、毎月、後見人報酬がかかります。
また、成年後見の申立てがされた以降は、後見人は原則、“本人のため”にしか本人の財産を利用することができませんから、生前は親族のためにある程度自由に使っていたお金も、原則として、以後は親族のために使うことができなくなります。
一方、メリットとしては、後見人が本人の財産を管理することができますから、裁判所の許可をもらった上、空き家を売却して施設利用料等に充てることができます。
また、取消権が使えるようになりますから、本人の判断能力の低下によって、本人が騙されて不当な契約を結んでしまった場合も、契約を取り消すことができます。
以上のように、メリットよりもデメリットのほうが大きいと感じ、実際に後見制度を利用しないという方も多いようです。
認知症が原因で本人の資産が凍結されないためにも、認知症になる前に『民事信託』の活用をし、認知症対策を行う必要があるでしょう。