遺産分割前の預金の払戻し
遺産分割前の預金の払戻しはできるか!?
相続人間で遺産分割協議がまとまらないことがあります。
相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをして裁判所で相続人が調停委員を交えて話し合うという方法もありますが、半年~1年以上かかってしまうケースも多々あり相続人にとって多大な負担となってしまいます。
その場合でも、現金や預貯金については、先に分けてしまいたいと考える相続人もいると思います。葬儀費用がすぐに必要な方や、相続税の納税期限が迫っている方にとっては大問題です。
しかし、被相続人が亡くなったことが、銀行に知られてしまうと、口座は凍結されてしまい、そう簡単には預金がおろせなくなってしまうのが実情です。
預金口座が一旦凍結されてしまうと、相続人の一人が窓口に行って、自分の法定相続分だけでも先に払戻して欲しいと金融機関に請求しても、「相続人全員の実印をついた遺産分割協議書と印鑑証明書を提出してください」の一点張りで、個別の払戻しに応じてもらえることはありません。
金融機関は相続人の争いに巻き込まれたくありませんから、全員が預金を下ろすことに同意をしている状態でないと応じられないと考えるのは仕方がないといえます。
各相続人が個別に払戻を請求する方法
上記のとおり、被相続人の死亡の事実が金融機関に知られてしまった後は、金融機関が相続人の法定相続分に応じた個別の払戻に応じることはありません。
それではまったく方法がないのかといえば、そういうことはありません。
裁判所に対し金融機関を相手に訴訟を提起するという方法があります。
少し法律的な話をすると、預貯金は可分債権であるとされていいるので、遺産分割協議を経なくても、相続開始と同時に法定相続分に応じた金額が各相続人に帰属するとされています。
よって、金融機関に対して訴訟を起こせば、特段の事情がない限り、裁判所は法定相続分に応じた払戻を認める可能性が高いです。
裁判所で勝訴判決が確定すれば、ほとんどの金融機関は判決に基づいて払戻に応じてくれます。裁判所のお墨付きの判決がありますから金融機関もリスクが無くなったと判断するためでしょう。
しかし、裁判を提起するには時間とお金がかかりますので、相続人が揉める可能性が高い場合には、事前に遺言書を作成しておく方がよいでしょう。